ご挨拶
第20回 日本正常圧水頭症学会
会長 梶本 宜永
大阪医科大学 脳神経外科/医学教育センター
第20回という節目に日本正常圧水頭症学会総会をお世話させていただくことになりとても光栄に存じます。節目にふさわしいように学会のテーマは、「新たな領域へ BEYOND THE HORIZON」といたしました。
これまでの20年間で、日本の正常圧水頭症研究は世界をリードする様になってまいりました。これはひとえに、脳外科だけでなく関連する各科(神経内科、精神科、神経放射線科、公衆衛生、リハビリ科)がシンフォニーを奏でるがごとく、協力して研究してきたからであります。
具体的な成果としましては、先駆的なガイドラインの策定、SINPHONI、SINPHONI2の多施設研究、画像診断におけるDESHサインの確立、無症候性期(AVIM)の発見と疫学、発症の候補遺伝子(SFMBT1)の発見、低侵襲治療であるLPシャント術の確立と普及、体格によるバルブ管理などがあります。
「新たな領域へ BEYOND THE HORIZON」には、次の10年もまた日本が正常圧水頭症研究を牽引できるようにとの願いを込めております。新たな領域としては、シャント術がアミロイド排泄やアルツハイマー病に及ぼす影響、リンパ液としての髄液循環の解明、重力が髄液循環に及ぼす影響との解明、分子生物学的な詳細な機序の解明、正常圧水頭症を見逃さない診断支援システムの確立、より低侵襲な治療法の開発、早期発見のための症状や補助検査法の確立、より先進的なバルブ管理手法の開発、正常圧水頭症にふさわしいリハビリ手法の開発、発症予防や先制治療の開発、海外との連携などがあるでしょう。新たな領域に踏み出し、それらの研究が完成することで、水頭症であることを見逃されたり、重い後遺症に苦しむ患者が激減することを切に望むしだいです。
しかし、会員の皆様からは、このようなテーマにとらわれず、正常圧水頭症について、日常臨床から基礎的研究まで、あるいは疫学・診断・治療・リハビリ・介護・医療連携・社会医学的課題などの幅広い分野での演題をご応募いただきまして、有意義な会に出来ればと考えております。
皆様からの演題のご応募とご参加を心よりお待ちしております。